
おまかせコースとはなにか?
「おまかせコース」は、日本のレストランのメニューでよく見かけます。この「OMAKASE」とは、いったい何なのか?お客にとってどんなメリットがあるのか?レストラン側の想いとは?をミシュランの公式パートナーであるその名も「OMAKASE」編集部が解説します。
おまかせコースとはなにか?
元来、日本語の「おまかせ」という意味は、他人が決めたものを自分が受け入れるので、その頼んだ人が自由に物事を決定して良いという意味である。仕事でも、「この件は君におまかせする」と使用したりする。
その日本語の意味に由来して「おまかせコース」とは、店側が自由に提供する料理とその順番を決定したコースと言える。フレンチなどのコースと違い、日本での「おまかせコース」は、基本、メニューが無く、料理が出てくるまでどんなものが出てくるか分からないことが多い。
おまかせコースの歴史
「おまかせ」は、料理屋の常連客が使う言葉であった。常連客は、その料理屋の基本的な値段や料理のコンセプトを知っており、料理人の力量にも信頼を置いている。さらに、料理人も常連客の好みを知り尽くしているので、「どんな料理が出ても大丈夫」という気持ちで、常連客は「おまかせでお願いします」と注文をした。
「おまかせ」という言葉は、まずは、寿司屋で使われることが多くなった。従来、寿司屋は自分が好きなものを単品でオーダーする仕組みであった。だから、お客は好きなものを好きなだけ食べた。高級寿司店には、メニューも値段表も無いことが多く、高級寿司店に通いなれた寿司の通は、寿司ダネの美味しい時季である「旬」や、おおよその値段を知り尽くしていて、自分の好みで注文をした。それが、寿司の伝統的な食べ方「お好み」で、「おまかせ」の反対語にあたる。
ところが、前述のように、高級寿司屋には値段表が無いため、あまり高級店になじみのない客は「お好み」で食べているとお会計がいくらになるかわからないという恐怖心もあった。そこで、「総額何円くらいで、おまかせで」と言ってもらえれば、それに合わせてお寿司を出しますという高級店のコメントが30年ほど前から多く聞かれるようになった。そのあたりから「おまかせ」という言葉を、あまり寿司に詳しくない人でも寿司屋で使うようになってきた。
実は、それ以前から寿司の通人の間では、「おまかせで」という注文をする人も多かった。前述のように、寿司屋の常連客は、大体の値ごろ感を知っているので、特に値段の心配をすることもない。「おまかせ」と注文すると、その時の旬のネタや、市場で仕入れた上物を料理人の目利きで提供してくれる、「プロがおすすめするメニュー」という事になるのである。寿司屋でそういう食べ方をする常連を「粋」とみる風潮もある。
近年では、寿司屋のみならず、懐石料理や天ぷら、焼き鳥にも「おまかせコース」というメニューが出現するようになり、日本のフレンチ・イタリアンにも「おまかせコース」と銘打ったものが出てくるようになった。寿司屋の「プロがおすすめするメニュー」というイメージが強いため、「おすすめの極上コース」という意味で使われていることが多い。
懐石料理におけるおまかせ
懐石料理は、日本の伝統的な料理であり、料理の順番が決まっている。「先附、前菜、お吸物、お造り、煮物、焼物、蒸物、揚物、酢物、止椀、御飯、香の物、水菓子、甘味」というようにコースが成り立っている。いわゆる料理人の「おまかせ」になるのであるが、そのような中でも、前菜として出てくることが多い「八寸」は、「おまかせでの季節の前菜」と言える。
寸とは日本の長さの単位であり、1寸は約3cmである。一辺が八寸(約24cm)の四角いお盆の上に、料理人が季節を取り入れて考えた小さな料理を盛り付けるので「八寸」と呼ばれる。
懐石料理は、お酒と共に楽しむようにメニューが組み立てられ、その前菜として出てくる八寸の料理は、盛り付けの見た目も綺麗で、お酒が進む。
寿司屋におけるおまかせ
前述のように、寿司屋での食べ方の基本は「お好み」で、客が好きなネタを好きなだけ食べるという事であった。寿司好きは、ネタの味の特徴を考え、食べる順番を組み立てた。もちろん、通人の中には板前に「おまかせ」で「つまみ」から握りまでを任せる人も多くいた。
実は、寿司の「おまかせコース」を広めたのは、日本の最高峰の寿司屋の一つである「すきやばし次郎」の小野二郎氏であるとされる。それまで、寿司通が自分自身で考えていた寿司ネタを食べるベストな順番を、小野氏がさらにプロの目でその日の仕入れ状況からその日のベストな食べる順番を決め、客に提供した。
そこから、日本の寿司屋の多くが常連や寿司通のものだけでない、「おまかせコース」を提供し始めた。
天ぷらにおけるおまかせ
多くの日本の天ぷら店は、従来、皿などにいくつかの天ぷらを盛り付けた「天ぷら盛り」をテーブル席にて提供していた。もちろん、昔から天ぷら店にもカウンターはあり、揚げたての天ぷらを一つずつ提供することもあった。ところが、カウンター席は常連たちの席であり、寿司と同じように、天ぷらのタネの旬を知り尽くしている、天ぷらの通人たちの特等席であった。
しかし、天ぷらは、「揚げたて」が美味しいのは言うまでもない。そこで、常に揚げたてを即座に提供するカウンターのみの高級天ぷら店も出現してきた。そのような店は、通人でなくても季節の良い食材を味わえるように「おまかせコース」を提供しているところが多い。
もちろん、「おまかせコース」がメニューにない店でも、予算や好みを伝え、「おまかせで」とオーダーしても良い。
イタリアン・フレンチにおけるおまかせ(ワインペアリングを含む)
イタリアンやフレンチは、もともと高級店ではコース料理として提供されることが多い。アラカルトで自分の好みのコースを組み立てることのできる人は、よほどの通人である。そういった意味では、イタリアンやフレンチは、「おまかせコース」主体と言える。しかし、いくつかのコースを提供している店は、「Aコース」、「Bコース」、「シェフのおまかせコース」などと、特別なコースとして「おまかせコース」を提供している。そのような場合は、「おまかせコース」では、メニューに書いていない、その日の仕入れに応じた極上の食材を使った料理が提供されることが多い。
もうひとつ、日本で流行ってきたもので、「ワインペアリング」がある。イタリアンやフレンチのコースの一つ一つの料理に合わせ、グラスワインを合わせるもので、いわば、「ソムリエのおまかせワインコース」である。料理店のシェフとソムリエが、その日の料理に合わせ泡・白・赤、場合によってはワイン以外の酒も提供し、食事を楽しめるように「ワインコース」を組み立てる。ワインに詳しくなくとも、一つ一つのワインをソムリエが説明してくれるので、とても楽しい。
もちろん、自分のお気に入りのワインを選ぶのも楽しいが、その店のソムリエの「おまかせ」を楽しむのも良いであろう。
おまかせを最大限に楽しむ方法(予約から食事までの作法)
「おまかせ」を最大限楽しむには、まず、「おまかせコース」というものがあるかどうかを予約したい飲食店に尋ねてみよう。そして、「おまかせコース」があると分かったら、自分がアレルギーや嫌いで食べられない物を予約時に伝えることがマナーである。「おまかせコース」しかない店では、食べられない食材が2つ以上あると予約を受けることができないと明示している店もあるので注意が必要である。
さらに、「おまかせコース」しか提供していない店では、客に最高のものを提供したいと、値段の高い食材をギリギリの量で仕入れることが多く、店に行ってから「○○は食べられない」といきなり伝えるのは料理の組み立てができなくなることが多いので避けるべきである。
まとめ
料理のプロが、自分の目利きで、最高のものを最高の状態で提供したいという「おまかせコース」。料理やお店に詳しくなくても、初めて行った店でも美味しく楽しく味わうことができる、「おまかせ」は、とても良いシステムなのです。
ぜひ、いろんなお店で「おまかせ」を楽しんで下さい。
